天高く馬肥ゆる秋 

[  2021年10月1日   更新  ]

 

      “Mastery for Service”
        “幼子はたくましく育ち、
         知恵に満ち、
         神の恵みに包まれていた"

         

 秋はよく「○○の秋」といわれます。
読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋等々いろいろとありますが、
大人も子どもも「食欲の秋」をいちばんに思い浮かべるのではないでしょうか。
そんな食欲の秋を象徴する故事成語に「天高く馬肥ゆる秋」ということばがあります。
爽やかな秋、空は高く澄み、馬たちがのんびりと牧草を食べている。
みなさん、そんな光景を思い浮かべるのではないでしょうか。
実は本来の意味は、もっと恐いものだったのです。

 古代中国に漢(初代皇帝が劉邦)という国がありました。
その国の歴史書「漢書」(初めて倭という名前で日本が登場した歴史書)に
「天高く馬肥ゆる秋」という一文が記されています。
「馬肥ゆる」とは、夏にたくさんの草を食べて強くなった馬ということです。
その強い馬に乗って北方騎馬民族の匈奴(きょうど)が攻めてくるぞ。それに備えよ
という警告を意味しているのです。つまり、秋になると自分たちが苦労して育て、
収穫した作物を匈奴(きょうど)が略奪に来るぞということです。
秦の始皇帝が作った万里の長城は、本来、馬の侵入を防ぐための高い壁なのです。
後に匈奴(きょうど)が衰え、略奪の心配がなくなり、現在の意味として使われるようになったのです。
どうですか?元々の意味は、今のような爽やかな感じではありませんでした。

 実りの秋、食欲も増す季節です。だから、食べ過ぎないように注意しようという
警告を意味するという点では、今も昔も同じなのかもしれません。

 ついでに、「爽やか」は俳句の秋の季語になっています。
もうひとつ、よく「秋味」ということばも使われます。
ビールに「〇〇ビール 秋味」などという製品が、今の時期に発売されます。
秋味とは何のことでしょうか?さんま?松茸?くり?
いえいえ、実は鮭のことなのです。参考までに。